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OSK日本歌劇団「闇の貴公子」初日

本日(2/23)初日を迎えたばかりのOSK日本歌劇団のミュージカル「闇の貴公子」を 観て来ました。M列18番(中央)での観劇です。

原作は夢枕獏氏の「陰陽師」シリーズで、安倍晴明と源博雅のコンビが面白い 作品なのですが、ちょうどツートップのOSK向けと言えるでしょう。なお、 春の近鉄劇場公演ということで初舞台生の口上が第2幕の頭にあります。 初舞台生の口上はしばらくは観られなくなるのがとても残念ですね。

さて、脚本・演出は北林佐和子。短編の集合と言える原作をどのように舞台化 するのにとても興味がありましたが、源博雅と茨姫の運命的な悲恋をメインに そえたのがとてもよかった。第1幕で源博雅と茨姫が出会うシーンになるまでは どうなることかと思うくらい平凡な出だしだったが、それ以降はストーリーが 流れ始め、ラスト前の集中力は見事な出来だった。茨姫という名前からわかる とは思うが茨木のことである。闇の世界で生きていかざるを得なくなった 鬼たち、鬼を自分のために利用する道満、道満のたくらみを防ごうとする晴明 たち。人と鬼との悲恋がとても胸を打つ作品。

その一方で、装置は大きな壊れた鳥居を左右に配し、3段構造の舞台であったが、 鳥居が今ひとつ映えないし、3段目の舞台は観客からの距離が遠すぎて今ひとつ の出来だった。第1幕ラストも舞台上に人が多すぎて散漫な印象を受けた。

衣装は晴明、博雅の他は、蜜虫、葩(はなびら)、彗(すい)や 鬼たちはなかなかよかったが(特に蜜虫の衣装はよかった)、それ以外、特に 狐の衣装はいまいちだった。

ダンスのOSKだけあって鬼のダンスはとても迫力があり見事だった。これだけ 踊ってくれると観ていてとても気持ちがいい。初舞台生のロケットもなかなか よかった。そしてフィナーレは耳になじんだビートルズメドレーだったが、 よく出来た構成で見ごたえがあった。


さて、それぞれの役について。

○洋あおい(源博雅)
歌が今ひとつおぼつかなく聞こえるところもあったが、演技がとてもよく、 晴明や茨姫と調子が合っていた。博雅のおおらかで人のよいところがもう少し 出るとよいと思う。
○那月峻(安倍晴明)
幻想的な姿の晴明だった。歌もよく、陰陽師の迫力が出ていたように思う。 ただ出番が多いわりにはあまり目立たなかった。
○沙月梨乃(茨姫)
この公演は茨姫の演技にかかっていると言っても過言ではないが、すさまじい 演技で魂のほとばしりを感じた。第2幕の途中からは彼女の演技に思わず涙を ボロボロとこぼしてしまったほどである。鬼の迫力がもうちょっとだけ欲しいと 思うシーンもあったが、これだけできれば十分だろう。彼女の演技を観るだけ でもこの作品を観る価値はあると思う。
○大貴誠(蘆屋道満)
原作では汚い爺さんだが舞台ではなかなかかっこいい敵役である。迫力も 十分だった。
○初瀬みき(酒呑童子)
鬼一族の首領の役。背が高く見栄えがするし、何よりダンスが見事である。 演技的にもいい出来だった。
○式神たち(千爽貴世、北原沙織、波輝一夢、吉津たかし、美森あいか)
これだけの実力者ぞろいとあっていずれも見事だった。役の性格もそれぞれ 面白く、コメディーリリーフ的な役割も担っている。
千爽の蜜虫は色っぽく美しい。北原はかわいらしい顔立ちがよく似合って いた。波輝と吉津はかなりの学年差があるがよいコンビで、特に吉津は コメディ担当で大健闘である。美森はとてもかわいらしい役柄をしっかりと 演じていた。
○若木志帆(葛の葉)
晴明の母で白狐という役(笑)。役の設定には思わず笑ってしまったが (葛の葉稲荷という神社もあり、このような伝説があるとのことである)、 まじめな役である。晴明を捨てるという回想シーンの踊りは熱演であったが、 脚本構成的にはこのシーンはちょっと長いと思う。

以上、とても面白い作品に仕上がっています。式神たちで少し笑いをとった あとの博雅と茨姫の悲恋、特に沙月の大熱演で泣けます。

P.S.
フィナーレBの女役の並びの豪華なこと!どこを見ればいいのか迷った。(^^;)

P.S.2
ロケットは初舞台生なのだが相変わらずOSKのロケットは見事である。今年は かわいい娘役が多い。

P.S.3
パンフ(1000円)には主要な登場人物の相関図が載っています。原作を読んでない 人はこれを見ておきましょう。蘆屋道満との対決にストーリーを絞っているので 原作を期待してはいけません。藤原道長はもう一世代後の人ですがあまり突っ込 まないように(笑)(道長が関わってくるのは清明の晩年のはず)。